我が家のリビングは、雑誌に出てくるような部屋ではありません。
家族のものがあふれていますし、全景をお見せできる状態でもありません。北欧風のナチュラルな雰囲気に憧れてはいますが、なかなか追いつかないのが現実です。
それでも、家の中に一番好きな場所があります。
リビングの収納棚の前、私がいつもPC作業をしているところです。専用の机はありません。棚の扉を2枚開けて、そこに板を渡して机にしています。
今日はその場所の話をします。
きれいな部屋の紹介ではありません。理想と現実の間で、少しずつ居心地をよくしてきた12年の話です。
同じように「理想には程遠いけれど、自分の場所がほしい」と思っている方に読んでいただけたらうれしいです。
私が育ったのは、トイレが外にある家でした
まず、少し昔の話をさせてください。
私が小学生まで住んでいたのは、想像を超えた造りの、相当ボロい家でした。
隙間風の吹く、ツギハギの家
父の父が周囲の人に手伝ってもらって建てたその家は、一部屋ごとに個性がありすぎて、ツギハギのような家だったのです。
しっくいの壁の寝室。砂壁の居間と子供部屋。タンスだけが置いてある小さな部屋はなぜか柄物の理由のわからない凸凹の天井。木目の板壁の玄関は異様に広く、居間は四方すべてが別の部屋につながっている、ふすまと障子とガラス戸だらけの不思議な間取り。歩くとミシミシいいますし、床は傾いていました。押入れは何がでてくるか分からないほど古臭く謎に包まれ、子どもの私は開けるのも嫌でした。
台所は青い土間で、冬はとんでもなく寒かったです。脱衣所はなく、カーテンで仕切ってあるだけ。お風呂にナメクジや蟻がいるのは日常茶飯事でした。
子ども部屋だった和室は、砂壁の模様が顔に見えて怖かったのを覚えています。隙間風も吹き込みました。私は今でも砂壁が苦手です。
極めつけは、家の中にトイレがなかったこと。
トイレに行くには外に出て、敷地内のとなりにある、昔牛小屋だった建物まで行かなければなりませんでした。夜は本当に怖くて、嫌でたまりませんでした。虫もいるし、そこもまた砂壁で、水洗でもありませんでした。
友達を家に呼ぶのが恥ずかしかったです。もう一度住みたいかと聞かれたら、答えは絶対に「NO」です。
るなるな「となりのトトロ」にでてくる、サツキとメイの家の劣化版というと、想像しやすいかもです。
それでも、縁側からは空が見えた
それでも、あの家には今の私につながるものがありました。
縁側があったのです。
(正確には、縁側にもなる側面がガラス戸の廊下です)
そこでシャボン玉をしました。花火もしました。夏はスイカも食べました。廊下に大きな鯉のぼりを置いて、トンネルにして遊んだこともあります。
そして、空がよく見えました。
お風呂も、湯船に浸かりながら窓を開けると空が見えたのです。ナメクジや蟻は気持ち悪かったですが、湯船からよく観察していました。今思えば、湯船から空が見える家というのは、なかなか贅沢だったのかもしれません。
寒くて、怖くて、恥ずかしい家でした。でも空だけは、いつもそばにありました。
私が今でも空の写真が好きなのは、たぶんあの家のせいです。
12歳、初めて自分の部屋を持ちました
12歳のとき、その実家を建て替えることになりました。
トイレが家の中にある、2階建てに
それはもう、とにかく嬉しかったです。
トイレが家の中にくる!自分の部屋が手に入る!ボロくない。しかも2階建て!
豪華さよりも先にトイレを喜ぶあたりが、当時の私の切実さを物語っています。
建て替えの間は、敷地内にあった小さなプレハブの家に一時的に住んでいました。狭かったのですが、秘密基地みたいで少し面白かったです。
そこで、インテリア雑誌をよく眺めていました。
「私の個室」や「私の部屋」という、ティーン向けのインテリア雑誌です。
そこによく出ていたのが、ダークブラウンでアンティーク風の家具でした。アメリカのカントリースタイルや、ヨーロッパの女の子の部屋。私はすっかり憧れてしまったのです。
壁紙も窓も、好きなものを選べた、夢中になった憧れの部屋づくり
新築の自分の部屋には、その雰囲気に近づけるものを選びました。
壁紙は、温かみのあるベージュ系の花柄。窓は格子の観音開きにしてもらいました。父が電気工事士だったので、花びらのような傘のついた吊りライトと、壁の間接照明もつけてもらいました。
ベッドも初めて買ってもらいました。アンティークの雰囲気になるべく近いダークブラウンの色味とデザインを、家具屋さんに置いてあるものから選びました。
雑貨は、お小遣いで少しずつ買い足しました。当時流行っていた、ステンシルの絵がついたティーカップ&ティーポットや、手作り風のテディベアのぬいぐるみを買い、部屋に飾りました。
ベッドカバーにもこだわりました。
布団の真ん中にネットがついていて、中の生地が見えるものがありますよね。あれが、どうしても部屋の雰囲気を台無しにしてしまう気がして嫌だったのです。
でも布団全体を覆えるカバーは、当時なかなか売っていませんでした。だから生地屋さんで、オフホワイトの、よく見ると柄があるようなシンプルな生地を大量に買ってもらいました。裁断は私がして、縫い合わせは親にお願いしました。
この辺のこだわりネタはまだまだあるのですがキリがないので、いつか別記事でお話できたらと思います。
机へのこだわり|学習机→カラーを合わせたシンプルな机に
家を建て替えてからも、しばらくは小学校入学時当初からの学習机を使っていました。
当時の学習机:夢と機能性のてんこ盛りが次第に窮屈に
私が小学校に入学した1980年代後半頃の学習机は、超大型・多機能デスクの全盛期。私の机もなかなかのイカツい大きさでした。
入学当初はとても嬉しかったものの、だんだんと学年が上がるにつれて、多機能さがかえって邪魔に感じるようになりました。
机の上の本棚やキャラクターのデスクマットは、いつしか外して使用していました。
ただ、その棚を外しても、ごっつい見た目でライトブラウン色の学習机は、どうしても部屋の雰囲気になじみません。せっかく買ってもらったものだからと、雑貨や布で何とかなじませようとしましたが、どうやっても浮いて見えます。
また成長した私には足回りが狭く、機能的にも不満が出てきていました。
建て替え3年後にシンプルな机を新調
そして中学3年の夏の誕生日に、「受験をがんばるから」という理由で、新しい机をついに買ってもらいました。
袖の引き出しがキャスター付きのワゴンになっていて、サイドテーブルとしても使える、シンプルなダークブラウン色の合板木目の机です。
椅子は、同じくダークブラウン色だったダイニングチェアの不使用分を拝借しました。
価格は安価なものでしたが、今思うと、バブル期とはいえ、色々わがまま聞いてもらっていたな・・・と思います。
足元も机上も広々として、ワゴンは別途のサイドテーブルにも使えて嬉しかったです。
インテリア雑誌で憧れた机:ライティングデスク
しかし本当はもう一つ、あの雑誌をみて憧れた、ほしかった机があります。
ライティングデスクです。下が物入れになっていて、上の扉を開くと机になる家具で、当時アンティーク家具として雑誌によく登場していました。
しかし学習用としてはあまり不向きなデザインなのと、近所の家具屋で置いてあるような代物では無かったため、さすがに買ってもらえませんでした。
この話は、後でもう一度出てきます。
40代の今、リビングは理想通りではありません
娘の出産を機に地元を離れ、マンションを購入して12年になります。
自分の家族を持って変わったこと
12歳から実家を出るまでのときのように、全部を自分で選ぶことはできません。
大きな家具、特にリビングのものは、夫に相談せずに買うわけにはいきません。家族みんなの空間であり家計から捻出するので仕方ないといえばそのとおりです。
でも細かな配置、小さな家具や雑貨は、自分の好きなように選んで設置しています。
その好きなものを買うために私は、パートに出ているようなものです。
布や雑貨など、自分の好きなものはできる限り自分の好きなように選びたい。服やピアノもそうです。
家計の貯蓄を増やす目的と同じくらいに、私のなかではその目的も大きいのです。
好みも少し変わりました。
アンティーク風の部屋には今でも憧れがあります。ただ、あの家具はやはり特殊です。家族みんなで暮らす部屋なら、北欧風のナチュラルな雰囲気のほうが居心地がいいのではないかと思うようになりました。
もし自分の部屋を持てたら、また違うテイストにも挑戦してみたいとは思っています。
あきらめたことと、家族に協力してもらっていること
それから、どうにもならないと諦めているものもあります。
財布、携帯、ダイアリー帳や子どもの学校関係のお知らせ。この手のものを全部しまい込むと、私はかえって落ち着きません。
忘れてしまいそうで不安になるので、定位置を決めて見えるところにおいています。
ダイニングテーブル脇の文具棚も同じです。見た目は決して良くありませんが、利便性重視です。
見た目より、自分が日々機能することを優先しました。
逆に、譲れないこともひとつだけあります。
床に極力ものを置かないことです。
リビングと洗面所については、家族にも協力してもらっています。
床にものが少ないと、比較的片付いて見えるので、ここだけでも意識すると違います。
オンライン面接を機に、好きな場所ができました
転職活動をしていたとき、オンライン面接をすることになりました。
生活感丸出しの空間をあらためて認識
そこで困ったのです。背景として映していい場所が、家の中に一つもありませんでした。
背の高い本棚はごちゃごちゃで、生活感が丸出し。文具棚も見せられません。どこにカメラを向けても、我が家の現実が映ってしまうのです。
ちなみに余談ですが、オンライン面接は直接の面接よりかえって緊張しました。自分の顔も画面に映るせいか、一対一の感じが強調される気がしたのです。
せめて一部分だけでも理想の空間を作る工夫
全部を片付けるのは無理なので、比較的見た目がスッキリしている、ダイニングテーブル奥の壁まわりを整えることにしました。
使ったのは、青い間仕切りカーテンです。自由に幅や長さをカットできるタイプで、ベルメゾンで買ったものでした。もともとキッチンの入口に突っ張り棒で設置していたものの、いつも開けっぱなしで、ほとんど使っていませんでした。
思い切って裁断。
そして棚の目隠しにしました。カーテンを切るのは少し勇気がいりましたが、使っていないまま置いておくよりずっと良かったです。
棚の上も整理しました。
郵便物は、放っておくとつい棚の上に置いてしまいます。それをこまめに片付けるようにして、最後に残したのは2つだけです。
フェイクグリーンと、馬の置物。
午年生まれで2026年の干支、そしてかわいいという理由で、これだけ残してます。
面接が終わったあとも、その場所はそのままにしています。
光の反射が少なくて写真も撮りやすいですし、何より、目隠しができてすっきりした空間になり、最近のお気に入りの場所になりました。
周りが片付いていると、それだけで気持ちがいいです。
収納棚の扉が、私の机
さて、その場所で私がどうやってPC作業をしているかという話です。
収納棚の扉を2枚開けます。そこに、棚の中で余っていた仕切り板を渡します。板の下には滑り止めシートを敷いています。
これが私の机です。
キーボードとマウスは板の上に、ノートPCは棚の天板の上に置いています。この高さの差が、私の体にはちょうど合っているのです。
この形にたどり着くまでには紆余曲折ありました。
この机になるまでの経緯
子どもの手が少し離れてきた頃、家で副業をしてみたくなってPCを購入。最初はダイニングテーブルで作業していたのですが、どうも疲れて長続きしません。
夫のアドバイスで、100円ショップの500円のPC台と、別売りのキーボードを買いました。悪くはないけど、設置と片付けが面倒でした。
スタンドを立てて、PCをセットして、作業して、またダイニングテーブルから片付ける。この一連の動作が、どうしても手間に感じられたのです。
これはピアノでも同じでした。すぐに始められない環境だと、私は続きません。
それで、今の形を思いつきました。
ノートPCなので、収納棚の高さで開くと、ダイニングチェアに腰掛けた時の目線にぴったり合います。逆にキーボードの高さはその位置だと高すぎて疲れます。そこで、PCを置いている棚下の扉を開けて板を渡し、キーボードとマウスを置いてみると、ちょうどいい高さにフィットしました。
板は買おうかとも考えましたが、棚の仕切り板が余っていたので試してみたら、これまたちょうど良かったのです。
当時は普通の机を置く場所もありませんでしたし、パートもまだ始めておらずお金の余裕がありませんでした。
自分史上一番のアイデアじゃない?とこっそり思ってます。
これは自作のライティングデスク?|工夫するのが好き
ここまで書いていて、気づいたことがあります。
下が物入れで、扉を開くと机になる家具。
私は12歳のときに憧れたライティングデスクを、35年後に自分で作っていたのです。
まったく意識していませんでしたが、買えなかった憧れの家具を、家にあるもので再現していたことになります。
もっとも、本物のライティングデスクと違って、私のものはおしゃれでも、頑丈でもありません。
夫は、想定外の使い方があまり好きではない人。「壊れちゃうんじゃない?」といい顔をしないことがしばしばでした。
そのたびに「気をつけるよ」と言いつつ聞き流してきましたが、やっぱり扉が傾いてきたので、家具の転倒防止用のつっぱり棒を買いました。
本来は家具と天井の間に突っ張るものですが、これを床と扉の間に立てて、下から支えることにしたのです。
高さが微調整できるので、正確に合わせられました。
設置は簡単で、ぐらつきなく固定してくれます。早く買えばよかったと思いました。
使わなくなったカーテンを切って目隠しにして、棚の仕切り板を机にして、転倒防止のつっぱり棒を床からの支えにする。私はどうも、あるものを本来と違う形で使うのが好きなようです。
ただ、これはあくまで我が家の家具に合っただけの方法です。本来の使い方ではないので、扉の作りや重さによっては傷むこともあります。試すときは様子を見ながらにしてください。
朝、とにかくセットして、空き時間があればいつもここにいます。
ハマるといつまでもやっています。家事とパート以外の時間は、ここにいるか、ピアノを弾くか、ゲームをするか、という感じです。
部屋全部を整えなくていい
私がこの場所を好きな理由は、はっきりしています。
まわりが片付いている中でPC作業をするのが、とにかく好きなのです。
視界に入るところが散らかっていないと、集中できません。散らかっていると、どうしても気になってしまいます。それどころか、集中するはずの時間にそっちを片付け始めてしまうのです。
だから、視界に入る範囲だけを整えました。
リビング全体は理想通りではありません。でも、私が座っている場所から見える範囲がすっきりしていれば、それでいいと思うようになりました。
部屋全部を完璧にする必要はなかったのです。
昔はもっと散らかっていました。
子どもが小さい頃は、自分なりに整理はしていましたが、今より断然ごちゃごちゃでした。
完璧なんて程遠かったのです。
子どもが小学生になり、高学年になり、だんだん手が離れて、パートに行くようになって。ほんとうに少しずつ、居心地をよくしてきました。
12歳のときも、そうでした。
壁紙を選んで、お小遣いでお気に入りの雑貨を少しずつ集め、ベッドカバーや机を揃えてもらって。あの頃から私のやり方は変わっていません。
一気に理想の部屋を作ることはできません。でも、少しずつなら近づけます。
まとめ:いつかはリビングの隣の和室を自分の部屋に
我が家のリビングは、今も理想通りではありません。
家族のものがここそこにありますし、お見せできないところも多々あります。
それでも、収納棚の扉の上には私の机があって、そこは家の中で一番好きな場所になりました。
部屋全部でなくていいのです。自分がいる場所の、視界に入る範囲だけでも整えると、気分が大きく変わります。
もし今、理想と現実の距離に疲れている方がいたら、まずは自分がよくいる場所の、目に入る範囲だけを片付けてみましょう。
それだけでも、すっきりとした気持ちの変化を感じるはずです。。
ちなみに私にはまた、ひとつ考えていることがあります。
リビングの隣の和室には、今は息子の机があります。本人が自分の部屋に机を移したいと言い出したら、そこに私の机とPCを置きたいのです。和室には、ピアノもあります。
12歳のときに手に入れた自分の部屋を、もう一度持てるかもしれません。
そう思いながら、今日も収納棚の扉を開けています。
まずは、自分がいちばん長くいる場所の、視界に入る範囲だけ、整えてみてください。



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